翻訳(Language Change)

滾る!燃え盛る! バイキングたちの火祭り「ウップ・ヘリー・アー」に行ってみよう!

英国スコットランドの北方、シェットランド諸島にある街、ラーウィック。
シェットランドの人々は、自身のことをイギリス人でも、スコットランド人でも、シェットランド人でもなく、スカンディナヴィア人であると語ります。

スカンディナヴィア人は、中世に西ヨーロッパ沿海部を侵略した海賊「バイキング」を祖先に持ちます。
近年では映画「ヴァルハラ・ライジング」や漫画「ヴィンランド・サガ」など、様々なメディアでテーマとされるバイキング。
その存在については、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

今回は、バイキングの子孫、シェットランドの人々によって行われるお祭り「ウップ・ヘリー・アー」について特集します。

当時のバイキングの衣装をまとい、圧巻の祭りをつくりあげるその様子を、しっかりレポートしていきます!

「ウップ・ヘリー・アー」の成り立ち

ウップ・ヘリー・アーについてお話する前に、まずはバイキングについて、お話しします。

バイキングとは中世、800年~1050年ごろの250年間の間に、スカンディナヴィア、バルト海沿岸(現在ノルウェー、デンマーク、フィンランド周辺)を中心に活動した海賊です。

海賊というとどうしても暴力的なイメージがありますが、もともと彼らの多くは農民であり、漁民でした。
ですから実際のところ、略奪行為は例外的なもので、収益の大部分は交易によるものであったと考えられています。

彼らは新たな交易路を求めてヨーロッパ中を航海しました。
今回の祭りの舞台であるシェットランド諸島も、その居留地のうちの一つです。

当時のシェットランドの人々は、自分たちの街へ降りたった彼らを受け入れ、混血化して、今に至っています。
現にシェットランドの人々全員が、バイキングの血を引いているわけではありません。

そうして、当初は侵略者ともされたバイキングを受け入れたシェットランド諸島ですが、21世紀の現在も、島外からやってくる移住者を迎え入れ続けています。
こうしたシェットランドの人々の多大なる包容力も、以上のような歴史的背景あってのものかもしれません。

ウップ・ヘリー・アーはいかようにして生まれたのか?

そのきっかけは19世紀初頭、ナポレオン戦争での兵士の凱旋を祝って行われたものとされています。
1880年代には、シェットランドのカレンダーにも祝日として記載されるようになりました。
以降130年にわたり、その伝統は守られ続けています。

ウップ・ヘリー・アーは、地元の人々の結束の強さを感じさせる祭りでもあります。
資金の大半は地元の人々により成り立っていますし、なんと、祭りに用いる船や衣装も、すべて人々の手で作られているんです。
ひとりひとりが祭りのため、自分のできることをやる…。
素晴らしい祭りだと思います。

新年と春の到来を祝う祭りとはされていますが、実際は冬の真っただ中、毎年一月、最後の火曜日に行われます。
なお今年は、2018年1月30日に実施されました。

ウップ・ヘリー・アーの見どころ

それ、ホントに自作?こだわり抜いた衣装

ウップ・ヘリー・アーにおいて、人々は当時のバイキングの衣装を着て、祭りに臨みます。

その衣装へのこだわりがハンパじゃない。
チュニックやスカート、羽飾りのついた鉄兜や模様が織り込まれたすね当て、手に持つ松明まで、シェットランドの人々は一年かけて、デザインから制作まで、自分で行うのです。

細部まで自分のこだわりを詰め込んだ豪華な衣装。
その値段はなんと、平均で約42万。
それでも、シェットランドの人々は気にせず衣装を作ります。
自分が生まれ育った街のお祭り。
それに出られることを本気で誇りに思っているからこそ、できることなんですね。

煌びやかな衣装を身にまとい、いざ行進。

祭りの本番は火曜日ですが、実際のところその前の週末ごろから、街を歩いていて人々がワクワクしている様子が伝わってきます。

前日の月曜日にはもう、お祭り気分です。
街中ですでに衣装を着て歩いている人もちらほら。

そしていよいよ、本番の朝。

約1000人のバイキング姿の人々は「The Guizer Jarl and his squad」と呼ばれます。
Guiserとならない住民たちも、彼らの豪華な衣装や祭りの進行補助など、ボランティアとして支えます。
いわば、シェットランド民全員で作り上げた祭り。
見る側としても、興奮しないはずがありません。

祭りの長である「Guiser Jarl」を筆頭に、Guiserたちが長い行列となり、行進していきます。
Guiserたちの姿はまさに、映画や漫画の世界で見たバイキングそのもの。
彼らは街の要所を回り、写真撮影会場で休憩を取ったり、公会堂で食事をとったりして日中を過ごします。

Guiserの中には子供もいます。
お揃いのバイキング衣装を身にまとい、夕方に行われるメインイベント会場に向けて歩いていきます。

日が暮れるにつれ、祭りも佳境へ。
休憩をとっていた大人のGuiserたちも松明を持ってパレードへ。
メインイベント会場へと、歩みを進めていきます。

メインイベント。バイキング船が燃え盛る

いよいよ、メインイベントが行われる広場に一同が集結。
広場の中心には、祭りのためにボランティアによって作られた「ロングテール」と呼ばれるバイキング船があります。

手作りとは思えない巨大な帆船に、行進を終えたGuiserたちは、次々と松明を投げ入れます。
轟々と燃え上がる帆船。
炎の光が、シェットランドの冬空を照らします。

燃え上がる船の横で、赤ワインを一気飲みする一人の男の姿。
彼は聖アンソニーと呼ばれる、動物の守護聖人。
赤ワインで身を浄めるのだそう…。

そして、馬に乗ったかと思えば…。
なんと、燃え盛る炎に向かって飛び込んでいきます。
無事に飛び越えた聖人と馬をみて、観客は安堵のため息をするとともに、惜しみない拍手を送ります。

やがて、船は燃え尽きると、Guiserをはじめとする役1000人がいくつかの会場に分かれ、歌や寸劇を上演します。
観客も一緒になって、ウップ・ヘリー・アーの夜を楽しむのです。

最後に

ヨーロッパ最大の火祭りといわれる、ウップ・ヘリー・アー。
祭りとしての迫力だけではなく、その裏には祭りの開催を誇りに思い、成功に向けて祭りを作りあげようとする人々の姿がありました。

近年の観客参加型の祭りとは異なり、ウップ・ヘリー・アーではパレード、メインイベント中の観光客の参加ができません。
ですが見るだけでも、ウップ・ヘリー・アーの魅力は十二分に伝わると思います。

現代に舞い戻った勇壮なバイキングの姿を、ぜひその目で目撃してください!