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個性的な仮面舞踏は一見の価値あり!ブータン「ティンプー・ツェチェ祭り」とは?

「世界一幸せな国」としても名高い、南アジアの小国ブータン。
ブータン国王の来日中、その言葉が日本の人々に深い感銘を与えたのも、記憶に新しいですね。

今回はそんなブータンで実施される「ティンプー・ツェチェ祭り」について特集します。
「ティンプー」とは、ブータンの都市のこと。
年に何度か行われる「ツェチェ」祭りのなかでも、最も規模の大きい祭りです。

その歴史や概要、見どころなど、しっかりとレポートしていきます。

「ティンプー・ツェチェ祭り」の開催場所

祭りはブータンの首都、ティンプーで実施されます。

ブータンは南アジアの内陸国として、インドと中国の2大国に囲まれています。
国土の70%が自然に覆われており、手つかずのままの自然と人々が共生している姿を垣間見ることができます。

ヒマラヤ山系に属し、小さな国土のなかで7000m級の山を4つも有しており、また日本と同様に、美しい四季を持つ国でもあります。

ティンプーはブータン王国の首都にして最大の都市。
国の大部分がティンプーで生活しているためか、ティンプーでは中央ブータンや東ブータン独自の文化もみられます。

「ティンプー・ツェチェ祭り」の歴史

「ツェチェ」とは、ブータンの国語であるゾンカ語で「月の10日」という意味で、お祭りでは太陰暦で月の10日目をお祝いします。

なぜこの日なのか?

それには、チベット仏教ニンマ派の開祖、グル・リンポチェに関係があり、彼の生涯において重要な12の出来事があった日はすべて、太陰暦における月10日にあったといいます。

現在でもグル・リンポチェは、チベット仏教世界の中心である聖なる山、須弥山(しゅみせん)のさらに上方、サンドペルリ宮に住んでおり、毎月10日の法要が行われるツェチェの場に戻ってくるといわれています。

なおグル・リンポチェには「グル・ツェンゲー」と呼ばれる8つの化身があり、最も有名なのが「パドマサンヴァバ」と呼ばれる化身です。
彼はパドマサンヴァバの姿で、初めてブータンに仏教を広めたといいます。

ツェチェは年間通して、あらゆる場所で行われます。
その開催期間は開きがありますが、内容としては基本的に、グル・リンポチェを称えるためのものになっています。

なかでも今回ご紹介するティンプー・ツェチェ祭りは最大規模のものですが、ツェチェ祭り自体はいつの時期も見物することができます。

以下、主要なツェチェ祭りです。

パロ・ツェチュ(開催時期:3月〜4月頃)

・「春の祭典」と呼ばれる、こちらも最大規模のツェチュ
・全国から見物客が訪れ、アクセスの良さもあって外国人観光客も最も多い祭り

クジェ・ツェチュ(開催時期:6月〜7月頃)

・開催場所は平均標高2000mにある高地、ブムタン地方
・パドマサンヴァバが初めて仏教を広めた地域としても有名
・ブムタン地方の中心ジャカルから少し北に外れた寺院、クジェ・ラカンで一日だけ実施

ティンプー・ツェチュ(開催時期:9月〜10月頃)

ワンデュ・ツェチュ(開催時期:9月〜10月頃)

・ブータン中部、ワンデュ・ポダンの断崖の上にあるゾン(ブータンに点在する政治機関)で実施。
・ティンプー・ツェチェと開催時期が被るため、双方見学することが可能

トンサ・ツェチュ(開催時期:12月〜1月頃)

・深い谷の中にあるトンサ県で実施
・幻想的な雰囲気に包まれたツェチェ祭り。冬季に実施されるので寒さ対策を万全に

「ティンプー・ツェチェ祭り」の見どころ

魅惑のマスクダンス「チャム」

ツェチェの際に必ず実施されているのが、色とりどりの衣装をまとった僧や現地の人々によるマスクダンス「チャム」。

カラフルで楽しい雰囲気を持つものの。チベット仏教に基づいたれっきとした宗教儀式であり、その儀式や法要の形式、踊り子の動きは一挙手一投足まで、書類にまとめられています。

ダンスというエンターテインメントの形をとることで、一般にもわかりやすく、チベット仏教の教えを伝えられるようにしているのですね。

墓場の守り神・ドゥルダ(骸骨)の舞、鬼神八部衆の舞・テゲーなど、その演目は非常に多様です。
なかでも先述の僧侶、グル・リンポチェの登場する舞踊が最も尊く、人々の間でも人気があります。
いくつかの演目をご紹介します。

まず「ギン・タン・ツォリン」と呼ばれる舞踊。


これは、グル・リンポチェの住居、サンドペルリ宮を表現したものです。

グル・リンポチェが現れる前に勇者「ギン」がその土地、この世を洗浄し、続いて忿怒尊「ツォリン」悪魔を退治することで、僧侶を出迎えるのです。

ギンは太鼓のバチをもって観客席にも飛び込んでいきます。
ブータンの人々は次々とギンの前に立ち、口元を隠しながら頭を下げます。
というのも、ギンの持つ太鼓のバチで叩いてもらい、悪いものを浄化してもらうためです。

「小さい子どもは悪魔に狙われる」という言い伝えは万国共通のようで、とりわけブータンの親たちは子どもの健康を願い、熱心にギンのもとへと子どもを連れていきます。
なかには何度も、別のギンのもとへ連れていく親御さんもいました。

続いてご紹介したいのが「ラクシャ・マンチャム」という舞踊。


死後誰もが相対する、閻魔大王とのやりとりを描いています。

この舞踊には、閻魔大王、白神と黒魔、動物神など、多くの神様が登場します。

動物神については、日本人にもなじみの深い十二支としての登場です。
舞踊の名前である「ラクシャ・マンチャム」というのも、動物神たちに由来しています。

いちばんの見どころは、白神と黒魔が登場し、閻魔大王によって天秤へとかけられるシーン。
その臨場感に、まるで死後、自分が閻魔大王に裁かれているかのよう感覚になります。
ぜひ一度見ていただけたらと思います。

舞踊ではありませんが、チャム中に現れる「アツァラ」と呼ばれる道化役にも注目です。


アツァラは僧ではなく村から代表として選ばれるもので、滑稽な出で立ち、ふるまいで人々を笑わせます。

なにも祭りを盛り上げるだけではなく、人々がけがをしないように統制したり、チャム中に衣装や仮面の乱れた人をさりげなく補助したりと、祭りの影の立役者としても活躍します。
赤色の仮面をつけ、つなぎの衣装を身にまとっていますので、ぜひ見つけてみてください。

大タンカ「トンドル」

「トン」とは見る、「ドル」とは解脱を意味しており「見るだけで解脱ができる」と称されるほど、ご利益のある大きな掛け軸です。

そこには、主尊としてグル・リンポチェのあらゆる化身の姿が描かれていて、すべて絹のアップリケで作られています。

各ゾンや寺院にてトンドルは保管されており、開かれるかどうかも、祭りによって様々です。

早朝の暗いうちからご開帳され、朝日が昇るころに法要が始まります。
人々はトンドルの前面に立ち、自らの額を裾にあてることで、無病息災を願うのです。

最後に

チベット仏教の流れを汲む「ティンプー・ツェチェ祭り」。

チャムやトンドルなど、宗教的側面を含んだ独特な祭りの雰囲気を味わえるのは、我々日本人にとって貴重な経験であると思います。

ブータンは若干の鎖国体制にあり、入国にもビザが必要ですので、綿密な渡航計画をたててから、訪れてみてくださいね。