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ヨーロッパのなまはげ?ハンガリー「ブショー・ヤーラーシュ」とは?

日本でも有数の奇祭といえば、秋田の「なまはげ祭り」ではないでしょうか。

秋田県全体の3%にも満たない地域、男鹿半島で実施される年中行事であり、仮面をつけ、藁の衣装をまとった「なまはげ」が、街を練り歩きます。

彼らは「悪い子はいねがー!」と悪事を戒め、災いを祓うのです。

近年の観光行事化の影響からか、なまはげを鬼と勘違いされている方も多いのですが、本来は年に一度、人々のもとに訪れる来訪神だそうです。

そんななまはげによく似た仮面を拝めるお祭りが、中央ヨーロッパの一国、ハンガリーに存在します。

その名も「ブショー・ヤーラーシュ」。

いったいどんなお祭りなのか?

その歴史、見どころなど、レポートしていきます。

「ブショー・ヤーラーシュ」の開催場所、開催時期は?

ブショー・ヤーラーシュが実施されるのはハンガリー南部の街、モハーチ。

街はヨーロッパで2番目に長い大河、ドナウ川に面しており、のどかな雰囲気が漂います。

歴史的事象としては1526年、ハンガリー、オスマン帝国間の戦争「モハーチの戦い」が勃発した地域としても有名です。

オスマン帝国軍の組織的戦術を前に、援軍を待たず戦いを急いだハンガリー軍は惨敗。

モハーチの戦いをきっかけに、時のオスマン帝国君主スレイマン一世はハンガリーへと歩をすすめ、ヨーロッパへの本格進出を果たすこととなりました。

そうした背景から、街中にはトルコ風建築物が散見されたり、ハンガリー語だけでなく、ドイツ語、セルビア語、クロアチア語など、多様な言語層が存在します。

開催時期としては、通例では2月ごろ。

カトリック教会における復活祭の46日前、通称「灰の日曜日」の前日まで続く謝肉祭の時期にあたり、木曜日から6日間にわたって実施されます。

キリスト教歴によってその開催時期はまちまちですので、事前のリサーチが重要となりますね。

「ブショー・ヤーラーシュ」の歴史

「ブショー・ヤーラーシュ」の起源については、主に二つの有名な伝承が存在します。

まず最も有力な伝承について。

先に述べた、オスマン帝国による占領時代。

モハーチの人々は彼らの生まれ育った街を追われ、森に身を潜めて生活していました。

寒空のなか、火を囲みながら語り合っていたある夜のこと。

どこからともなく老人が姿を現し、彼らを前にして語り掛けます。

”・・・案ずるな。苦しい生活はじきに良くなり、家へと帰れる日がきっと来るだろう。来るべきその時が来るまで、あらゆる武器を用意し、敵を震え上がらせるような仮面を彫り、戦いに備えるのだ。さすれば嵐の夜に戦士が現れ、お前たちを導くだろう・・・“

再び、どこへともなく姿を消していく老人。

あの老人は何だったのだろうか。

人々は疑心暗鬼になりながらも老人の教えに従い、仮面をつくり、武器をこさえました。

そして数日後、嵐の夜に、本当に戦士が現れたではありませんか。

彼の指示のもと人々はこしらえた仮面を被り、モハーチへと大きな音を立て、進軍していきました。

暴風のなか、奇怪な音とともに現れた恐ろしい仮面をみて、オスマン帝国の兵士たちは恐れおののき「悪魔が襲ってきた」と口々に叫びをあげました。

そして、朝にはすべてのオスマン軍兵士が逃げだし、人々は故郷を取り戻すことができたのです。

嘘のような、まるでファンタジーのお話ですね。

もうひとつの伝承も古くから伝えられているもので「ブショーが冬を脅かし、追い払ってくれる」というものです。

こちらは、日本と同じように四季の移り変わりを祝うという、スラヴ民族の伝統から生まれた伝承ですね。

現在では以上二つの伝承が上手く融合し、ハンガリーを代表する有名行事となっています。

2009年には。ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

「ブショー・ヤーラーシュ」の見どころ

祭り自体はおよそ1週間にわたり実施されますが、観光客を見越して、土曜日と日曜日にメインイベントが敢行されます。

なかでも最も盛り上がるのが日曜日です。

祭りの主役は「ブショー」と呼ばれる、仮面を被った男たち。

以前はSokacというスラヴ系住民のみブショーに扮することができました。

ですが、モハーチは前にも述べたように多様な民族、言語構成をもつ街。

現在はモハーチに在住する男性ならだれでも、ブショーを被ることができます。

ブショーの仮面は木製で、牡羊の角がつけられています。

衣装も羊の毛皮でできており、白のズボン、黒のブーツをはき、腰には家畜の首に付けるような大きなカウベルが。

伝承を再現するかのように、歩くたびに大きな音が鳴り響きます。

さて、謝肉祭の日曜日。

昼過ぎごろから始まるのはまず「ブショーの川渡り」と呼ばれるイベント。

KOLO-REVと呼ばれるドナウ川の渡し船フェリーのラインに順じて、小舟に乗ってやってくるブショーたち。ドナウ川の中州から、モハーチの街へと上陸する、伝承の一場面を表わすイベントです。

そこから「ブショーの練り歩き」が始まります。

小舟から降りたった数百人のブショーたちが、コーロー広場(KOLO TER)からセーチェニ広場(SZECHENYI TER)へと行進していきます。

年に一度のブショーの姿を拝もうと、街は大賑わい。

その雰囲気はディズニーランドを彷彿とさせます。

秋田のなまはげとは異なり、ターゲットは子どもに限らず、老若男女問いません。

女性もセクハラおかまいなしに襲われたりします。

ボーイフレンドも面白がって、彼女が襲われている光景をカメラに収めようとする始末です。

襲われる人々の姿だけでなく、ブショーの仮面にも注目です。

人それぞれみんな仮面が違うので、ぜひカメラを用意して撮影してみてください。

パレード最終地点の警備付近は、人も少なく、穴場の撮影スポットですよ。

午後5時頃になると、一同は再びドナウ川へと向かいます。

ブショーたちは船へと乗り込み、中から黒い棺をつるし始めます。

中に入っているのは「冬」。

水葬によって冬を葬ることで、モハーチにも春がやってくるのですね。

ブショーによって黒い棺が落とされ、水底に落ちた音がしたその瞬間、人々から歓声があがり、みんなでモハーチの春をお祝いします。

祭りのクライマックスは、「マーグヤ火葬」です。

マーグヤとは、冬将軍を模した藁人形。

盛大なお焚きあげのもと、火を囲んでブショーや人々によるダンスが始まるのです。

最後に

「ブショー・ヤーラーシュ」が終わったとたん、モハーチの街は、まるでそれまでの寒さが嘘であったかのように、街全体が暖かくなるそう。

なんとも神秘的なお祭りですね。

そうした厳かさだけでなく、モハーチの人々のお茶目さも感じることができる、なにより楽しいお祭りです。

ぜひ、ハンガリーのなまはげ「ブショー」に、襲われにいってはいかがでしょうか?