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わが子に向けてちょっと変わった厄除けを! スペイン「赤ちゃんジャンピング祭り」に参加しよう!

様々な世界の祭りを見ていると、子どもの無事、健康を願うお祭りというのは数多く存在します。

とりわけ「小さな子どもは悪魔から狙われる」といった言い伝えは万国共通のもので、各国の人はあらゆる手段、方法で、悪魔を追い払おうとするのです。

今回は、わが子を悪魔から守るため、ちょっと変わった方法で厄除けを行うスペイン「赤ちゃんジャンピング祭り」についてレポートしていきます。

「赤ちゃんジャンピング祭り」の歴史

祭りが始まったのは1620年と、その歴史は非常に長いです。
ただ、どうしてこの祭りが始まったのか、明確な起源は分かっておりません。
その起源には、古きローマ時代の伝承も関係しているといわれています。

しかし中世ヨーロッパ時代は、赤ちゃんにとって非常に生き延びることが難しかった時代でした。

出産に関する記録によれば、仮に100人の赤ちゃんが誕生した場合、19人が2歳を迎えるまで、さらに27人が18歳になるまでに亡くなり、無事に20歳までいられるのは、100人中およそ54人ほどだったそうです。

当時の人口分布図をみても、当時成人と認められていた15歳以上の大人は、全人口のうち半分以下。成人まで生き延びられるのはほんの一握りだったわけです。

だからこそ、当時からあった「悪魔」という概念を借りて、赤ちゃんの無事を願おうとしたのかもしれません。

「赤ちゃんジャンピング祭り」の開催時期、開催場所

お祭りはスペインの西端、ブルゴズ県近郊にあるカスティージョ・デ・ムルシアという村で実施されます。
人口300人程度の小さな村ですが、近年では祭りの知名度が上昇してきたこともあり、開催が近付くにつれて観光客の数も増加しています。

なお、開催はカトリックにおける「聖体祭」に合わせて行われます。

聖体とはパンやぶどう酒など、キリストの体の実体として信じられた、食べられるものを指します。
聖体祭とはイエスの人生における特定の出来事を祝うものではなく、聖体を崇めるお祭りとして、多くのカトリック教徒たちが参加します。

聖体祭は6月ごろに開催されることが多く、祭りも4日間にわたり実施されます。

「赤ちゃんジャンピング祭り」のみどころ

悪魔たちが赤ちゃんの頭上をひとまたぎ

そもそもこの「赤ちゃんジャンピング祭り」、スペイン語では「El Colacho(エル・コラチョ)」と呼び、その意味するところは「悪魔」。
主役は赤ちゃんではなく、悪魔なのですね。

エル・コラチョたちは全身黄色で、赤色の縁どりがされた衣装を身に着けています。
彼らの前方にいるのは、生後1年にも満たない赤ん坊たち。
路上に敷かれたマットレスの上に、人もの赤ん坊が並べられるわけです。

いよいよ祭りの始まりです。
まるで陸上競技のハードルのように点在するマットレス。
赤ん坊の上を、エル・コラチョたちがどんどん飛び越えていきます。

「もし悪魔たちが足を踏み違えてしまったらどうしよう…」
「飛距離が足らなければ赤ん坊はどうなってしまうのだろう…」
観客たちはそういった不安を抱きながら、エル・コラチョたちが飛び越えるのを見守ります。

村の人たちも、危険であることは百も承知なのです、
そのリスクがあるからこそ、親たちは赤ん坊を寝かせることで、彼らの幸福を祈るのです。

村人から選出されたエル・コラチョたちにとっても、赤ん坊の命がかかったお祭りです。
前もって飛び越える練習をしていたころもあり、今まで負傷者が出たことはないそうです。

そしてエル・コラチョ全員が無事にすべての赤ん坊を乗り越えた暁には、観客たちは歓声をあげ、悪魔祓いが成功したと、惜しみない拍手を送るのです。
悪魔祓いを終えた赤ん坊たちはバラの花びらを撒かれ、両親のもとへと戻っていきます。

町全体を巻き込んだパレード

悪魔祓いの終わった後には悪魔「エル・コラチョ」と、紳士「アタバレーロ」たちによるパレードが実施されます。

パレード中には、エル・コラチョにからかいの言葉を浴びせる子どもたち。
エル・コラチョは彼らに向けてムチを振り回し、追いかけまわしたりしてパレードは進んでいきます。

紳士アタバレーロたちは、黒い帽子とマントという出で立ちをしています。
先ほども述べたように、聖体祭としての意味合いを持つこの祭り。
アタバレーロたちは太鼓を打ち鳴らし、聖体の入った聖櫃の存在を人々に知らせる役割を担っています。

パレードは夕方まで続き、日中には悪魔たちと村の若者たちによる歌や踊りが、夜にはエル・コラチョとアタバレーロたちが、イエスにむけて祈りを捧げます。

祭りのなかのエル・コラチョ

赤ちゃんを飛び越えるイベントやパレードだけでなく、カトリックに強い結びつきのあるイベントも、祭りの間に実施されています。

一見すると厳かな場所にも、悪魔たちの姿はみられます。
全身鈴だらけの村の若者とともに聖櫃の前で踊ったりしたり。

いまでこそ彼らの踊りはそこら中で見かけることができますが、実はエル・コラチョの踊りはかつて、200年以上にわたり禁止されていました。

というのも本来、カトリック教徒たちの考えていたエル・コラチョは、もっといたずらばかりするいわば「悪ガキ」という感じでした。
そうしたイメージを教会の人々は受け入れられなかったため、エル・コラチョたちは長い間、その存在を自重せざるを得なかったのですね。

ですが現在では、彼らの振る舞いは大分許容されるようになりました。
パレード中に子供たちと彼らの追いかけっこが見られるのも、その証拠です。

最後に

参加とはすなわち、自分の赤ちゃんをマットレスに寝かせてもらうこと。
一介の村祭りですから、参加者は村人ばかりですし、外部からの赤ん坊を受け付けている事例は聞いたことがありません。

ですから、見物客としての参加となります。
自分の赤ん坊が参加していなくとも、ジャンピングのイベントは一見の価値ありです。

赤ちゃんの上を悪魔が飛び越えていく非常にインパクトのあるお祭「赤ちゃんジャンピング祭り」。

しかし、秋田県の「なまはげ」や名古屋市、鳴海地区の「猩々」といった例をみるように、土地に宿る悪者や守り神たちが子どもの健康を願うというのは、案外どこにでもある話なのかもしれません。

スペインに行った暁にはぜひ、マットレスに敷かれた赤ちゃんたちを見て、ソワソワしてくださいね。